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ミネソタに学ぶ

今週のケンプラッツのニュースで、こんな見出しが目に入りました。
「新卒採用の拡大で攻めに転じる大手建設コンサルタント」
「建設会社の土木技術者、事業規模からみれば過剰だが現実は不足」

設計会社(建設コンサルタント)も工事会社(建設会社)も人材不足に陥っているようです。
一方で、建設業ハンドブック2008によれば、公共土木事業の政府発注額は、'95年の35.2兆円をピークに減少を続け、'08には16.5兆円('95比0.47)と半分になっています。建設業就業者数は、'97の685万人をピークに減少を続け、'07には552万人('97比0.81)と約2割減少しています。


単純に言えば、仕事が半分になって社員が8割になったということなので、一見人員過剰に見えますが、ケンプラッツのニュースからわかるように現実は人材不足に陥っているということです。
社員数が2割減って人材不足と言っているわけですから、実質の仕事量は2割も減っていないと読み取れますね。でも、発注金額は半分になっているということです。恐ろしい状況です。
過渡期に表れた一時的な現象だと言ってしまうと簡単ですが、ここで働く者にとってはたまったものではありませんね。

明るい話題というと、こんなニュースもあります。
「海外コンサルタント業務の受注総額が35%増、非ODA業務も増える」

国内に仕事がなくなったために、大手企業は海外に進出していっているということです。しかし、大きな事件もありましたし、これも限界が見える気がしますね。
国内をどうにかしないといけないというのはみんなわかっていますが、大きな流れは当面は変わりようがないでしょうから、あとは自分のことは自分で考えないといけないということでしょうか。


それから、もう一つ目についたニュースがありました。
「米国・ミネソタ州で崩落した橋が1年余りで架け替え、9月16日にも開通」

ネットで他のニュース記事を検索したところ、こんなニュースもありました。昨日(9/18)開通したようです。
すごいですねえ。
私のような想像力の乏しい人間は、
「ミシシッピ川に橋を架けるとすれば、低水路部の橋脚は非出水期にしか工事ができないだろうな。出水期は日本とほぼ同じくらいとして、橋脚工事は今年の秋からになりそうだな。すると、桁の架設が早くて年明けからだから、開通は来年の春か夏だろうな」
などと考えてしまいがちですが、それがこの9月に開通とは驚きですね。

ほかにも驚いたことがありました。
実は、この橋の復旧工事を落札したのは最高価格の札を入れたところ(JV)で、総合評価方式(価格点+技術提案点の合計で、落札者を決める方式)によってより低い価格で入札したところを破った、ということは2月頃に聞いていました。私は、短期間で架設できる鋼橋を提案したところが、低価格のコンクリート橋案を破ったのだろうと想像していたのですが、まったく逆だったということにとても驚かされました。
勝ったのは高いけど早いコンクリート橋案だったのです。これ以外はすべて鋼橋案だったそうです。
ケンプラッツのニュースページの写真を見ると、大きなフローチングクレーン(FC。台船にクレーンがついたもの)を使ってプレキャストセグメント方式でPC箱桁を架設していっています。
これには驚きと同時に寂しさも感じました。鋼橋とコンクリート橋というのは、ライバル関係にあります。鋼橋が崩落してコンクリート橋で再建されたというだけでも、コンクリート橋にとっては大きなPRになりますよね。
それが、FCで架設しているんです。私の先入観だけかもしれませんが、FCは鋼橋の架設で発達した技術だと思います。コンクリート橋の架設ではワーゲンなどはよく見ますが、この工事で採用されたのはFC架設でした。工事の写真を見るとまるで鋼橋の架設なんですよね。鋼橋の架設技術を利用したコンクリート橋案が鋼橋を破ったんですね。

驚いたことはまだあるんです。
報奨金と罰金です。
これも少しだけ耳にはしていたのですが、何のことかといいますと、この工事には工期に対する報奨金と罰金が設定されていました。契約上の工期('08.12.24)に対して、短縮できれば報奨金がもらえ、遅れれば罰金が科せられるというものです。報奨金も罰金も1日あたり20万ドル(約2150万円)だそうです。9/18開通ということは、97日短縮していますね。報奨金は19,400,000ドル(約21億円)ということになります。
最盛期には600人の作業員を投入していたと記事にありましたので、平均して1日500人が従事したとすると、420万円/人ですね。このうちどの程度が作業員に還元されるのかわかりませんが、約1年の工事でこれほどの報奨金が出るとはすごいです。しかも、3ヵ月も早く仕事が終われば、次の仕事にも取り掛かれるわけですし、工期短縮への大きなインセンティブを与えられたと言えるでしょう。
逆に工期短縮により利用者が受ける便益を考えますと、落橋前の交通量は1日20万台でしたから、延べ2,000万台くらいが便益を受けることになります。1台あたり1ドルの報奨金を用意したということですね。まあ、通行料100円の橋だと思えば、そんなものだと思いますね。
つまり、この工期短縮は、工事を発注した行政機関も、工事を受注した企業も、そして、この橋を利用する市民にとっても利益があったということです。何のひねりもありませんが、Win-Win-Winの関係ですね。

日本でもこういうやりかたはできないものかなあ。
このミネソタの例を日本で大々的に紹介していってほしいと思います。
そうすれば、日本の公共土木事業も少しは変わるかもしれません。
なにより、能力や成果が評価されて、高い報奨を受け取るということが素晴らしいじゃないですか!
イマジン * 建設分野 * 05:39 * comments(6) * trackbacks(0) * - -

コメント

この度は難題にもかかわらず、お引き受け下さりありがとうございました。
心より御礼申し上げます。

さて、このミネソタの橋梁、色々な意味で興味深い内容を含んでいると思います。
例えば、橋梁崩落の原因というフェーズもさることながら、今回イマジンさんがおっしゃっていらっしゃるような双方向便益についても、我が国の各種制約を睨みつつ制度設計できないのかを問う機会として扱うのも意味のあることではないかと思います。

私に許された土木学会誌での特集機会は1回です。
実はこれをどう使うか思案中です。
やりたいことが多すぎて、プライオリティを決しかねているというのが正直なところです。

誌面での特集はある意味読み捨ての感が否めません。
それでは折角の機会が勿体ない。
実際のイベントと特集を組み合わせるとか、或いは挑戦的な特集を組み、新たなインセンティブをセンセーショナルに巻き起こすなどといった内容にするとか。。。
また、ご相談させて頂く機会があるかもしれませんので、その節には何卒宜しくお願い申し上げます。

では、イマジンさん、並びにご家族の皆さま方のご健康をお祈り申し上げます。
Comment by ヤマト @ 2008/09/20 9:37 AM
米国・ミネソタ州の崩落橋の架け替えのお話・・こんなシステムであるべし・・と思いました。報奨金については他でも同じような話は聞いたことがありますが、最高価格の札で落札した話は、どこかの国の○○に聞かせて欲しい・・○○はご自由に!(笑)
きっと評価基準が明確だから、こんな結果になったものと思います。日本の現状は、ますます逆のサイクルに嵌まっているのでは・・。IntPE
Comment by kmatsu改めIntPE @ 2008/09/21 10:56 AM
ヤマトさん、このたびはありがとうございました。
とてもいい機会をいただいたと思っています。
ドイツから学ぶべきことを少しでもご紹介できればと思っています。
Comment by イマジン @ 2008/09/21 6:08 PM
ミネソタの事例は本当に勉強になりますよね。
1カ所の亀裂が多径間を崩落させてしまった橋梁構造
危険性を指摘しながら通行止め等の措置までは提案できなかった橋梁点検
最短で復旧させるためのデザインビルド(設計施工一括)式の発注
民間の技術を活用するための総合評価方式による落札者決定
工期短縮へのインセンティブを付与する報奨金と罰金制度
いろいろ考えさせられることがあります。
Comment by イマジン @ 2008/09/21 6:10 PM
 お疲れ様です。
 私も鋼橋がコンクリート橋に負けちゃったみたいな思いがあります。たしかに、コンクリートセグメントをFCで吊り上げられるとつらいものがありますね。。。
 少し話題がそれますが、工場での製作能力に関わる課題を国内で感じていますので、なかなか厳しい状況です。疲労耐久性を向上させるために、溶接ビードの削り勝負なんてことになっています。。。
Comment by ふるのぶ @ 2008/09/22 8:21 AM
奇遇ですね。
ちょうど、ふるのぶさんのページにコメントして、ここに戻ってみたら、ふるのぶさんのコメントがありました。
工事発注(製作+架設)されてから疲労耐久性を向上させる競争って・・・なんかヘンですね。設計段階で検討しておくべきことだと思いますが、(昔のJHみたいに)詳細設計込みの鋼橋工事だと、そういうことが起きるんですかね。それにしても、削り勝負なんてことになっているとは・・・
ミネソタの例では、工期短縮の便益を工事会社に還元するということが行われましたが、この論法で考えると、設計単独の業務は不要で、コンサルに設計させている期間がもったいない(社会的損失)からデザインビルドってことにもなりますよね。
いろいろ考えるよい機会・題材だと思います。
Comment by イマジン @ 2008/09/22 8:51 AM
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