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コンクリート診断士の更新2

今日ふと思い出して、コンクリート診断士の更新書類(調査報告書A)を提出しました。昨年11月に案内が届いて、2/1〜2/29が提出期間だと書かれていたのを見たときから、忘れそうだと思っていましたが、やはりすっかり忘れていました。よく思い出したものです。
提出自体は、コンクリート工学協会のホームページからできるのでたいへん便利です。
以前にもこのブログでご紹介したように、この調査報告書は公開されるので、守秘義務を侵さないないようにすることが求められています。これって結構難しい要求ですね。公務員の場合、業務上知り得たことを漏らしてはならないということになっているので、たいていのものは守秘義務に引っかかってしまってまともに書けないような気がします。
という事情もあって、テーマa「実務経験」ではなく、テーマb「講習会への参加報告」を選びました。ちなみに、テーマcは「居住地域で見かける構造物の調査報告」となっています。提出期限があと数カ月先だったら、きっとテーマcを選んだと思いますが、これは次回の楽しみにとっておくことにしましょう。
というわけで、「講習会への参加報告」について書いた調査報告書をご紹介いたします。


表題:道路橋の維持管理に関する講習会に参加して 〜維持管理に関する問題の提起〜

1. はじめに
平成19年9月、橋の崩落事故が相次いで発生していた時期に開催された、社団法人日本道路協会(以下、協会)が主催する道路橋の維持管理に関する講習会に参加した。この講習会を通じて考えさせられた問題点について私見を述べる。

2. 相次ぐ橋の崩落事故と橋梁維持管理の現状
8月にミネソタ州ミネアポリスで、ミシシッピ川に架かるトラス橋が崩落した。6月には国道23号の木曽川大橋(下路式トラス橋)の斜材が床版を貫通する部分で腐食し、破断していることが確認された。中国でも橋の崩落が相次いで4件発生した。
木曽川大橋の斜材破断を受けて国土交通省(以下、国交省)が行なった緊急点検では、11橋で斜材や垂直材の床版貫通部に腐食が見つかった。そのうちの本荘大橋では、幸いにして落橋には至らなかったが、警察との通行止め協議中に斜材が破断するということが発生した。
また、同時期に行われた橋梁点検の実態調査では、次の事実が明らかになった。

 ・福岡県など7県と、市町村の9割で橋梁定期点検が実施されていないこと
 ・1橋当たりの年間維持修繕費は、村2万円、町7万円、市8万円、政令指定都市81万円、
  都道府県69万円で、市町村の維持修繕予算が著しく不足していること
 ・土木技術者が一人もいない市町村は、全国1,787市町村のうち479(27%)あること

このように、直轄国道や海外に端を発した橋梁維持管理の問題であるが、最も深刻な状況にあるのは地方自治体(特に市町村)であることが浮き彫りになった。予算も技術者も不足しているなか、建設以来一度も点検されていない多くの橋が供用され続けている。このようななか、国交省は、今後市町村にも橋梁定期点検を実施するように求めていくことを公表した。これから市町村がどう行動していくのか。国は財政面、人材面でどのようにサポートしていくのか。実効性のある対応を期待したい。

3. 橋梁定期点検はこのままでいいのか
なぜ、定期点検されている橋で、斜材が破断するまで損傷を見つけられなかったのか。
下路式橋梁の斜材や垂直材の床版貫通部で発生する腐食は、古くからよく知られている問題である。それにもかかわらず破断するまで見つからなかったのは、点検要領あるいは橋梁点検のやり方に欠陥があるからである。
橋梁点検要領は、昭和63年に制定され、平成16年に改正された。対象は国が直轄管理する橋(以下、直轄橋梁)に限定されており、自治体への拘束力はない。旧要領による定期点検は10年ごとに実施することと定められていたが、新要領では5年ごとの実施に改められた。対象橋梁のほとんどが1回は点検され、平均3回程度点検がされているのが現状であろう。
現状では、直轄橋梁の点検は橋梁点検講習を受講した者が実施しなければならないという運用をされており、点検できる者の絶対数が不足している。一方で、コンクリート診断士や土木学会認定技術者(メンテナンス)など、調査、診断、補修・補強に関する高度な専門技術を有する技術者も増えているが、あまり活用されていないのが実情である。人材活用においても改善すべき点があるといえる。
点検方法にも問題がある。床版を貫通している部分を含む大気中部が大半を占める1本の斜材につき1つの損傷度判定をつける。そのため、床版貫通部をよく視なくても損傷度判定をつけられる。こうして重大な損傷が見落とされるのである。画一的な点検シートは、データを整理したり、管理したりしていく上で便利であるが、重大な損傷を見落としてしまっては本末転倒である。この講習会でも高力ボルトの遅れ破壊、鋼橋の疲労亀裂、鋼製橋脚隅角部の亀裂、RC床版の疲労損傷、PCT桁の間詰部ひび割れ、アルカリ骨材反応、塩害、中性化などの損傷の特徴を紹介されていたが、それを合理的かつ確実にチェックできる橋梁点検でなければ、損傷の特徴を明らかにした意味がない。

4. 15m未満の橋は安全なのか
国交省の資料によれば、H11での直轄国道の15m以上の橋梁延長は約1,100km、都道府県管理は約3,600km、市町村管理は約2,700kmとなっている。15m未満の橋梁延長について整理されたものはないが、15m未満の橋を多く抱えているのは疑いなく市町村である。当然、国と市町村では維持管理のやり方も変わってくる。しかし、市町村向けの維持管理手法はだれも研究していないのではないか。橋梁点検を行なったことがない市町村の道路管理者は、橋梁に関する専門知識も不足しているだろう。
写真-1は、市町村が管理する15m未満の橋の補強工事の際に撮影したものである。床版の抜け落ちが発生したために行った工事であったが、床版を撤去してみると主桁(H形鋼)の腐食が著しく、上フランジがほとんどなくなっていることがわかったものである。この橋では床版抜け落ちが先に発生したため、橋が崩落する前に主桁の損傷を発見することができ、大事に至らなかったが、床版がもう少し持ちこたえていたら、橋が崩落していたかもしれない。
15m未満の橋は、直轄国道でも点検されていない。本当に点検しなくてよいのだろうか。予算上の問題から15m未満の橋までは点検することができないと言っていてよいのだろうか。発注者が日常のパトロールにおいて、そうしたことを踏まえて危機感を持って構造物を視ているだろうか。大きな構造物の点検は委託によって対処できても、小さな構造物の点検は発注者の目だけが頼りなのである。

5. 維持管理の方向性
講習会の冒頭に、「補修・補強分野は新設橋梁よりも創意工夫の余地が大きい」という話があった。私もこの意見に賛同する。しかし、補修・補強関係の調査、設計、工事は、新設橋梁のそれに比べて個々の発注額も市場規模も小さい。およそ1桁違うだろう。そのため、ライフサイクルコストや予防保全といった言葉も浸透し、維持管理の重要性が一定の理解を得られた今日でも、橋梁技術者の多くが新設橋梁に携わっており、補修・補強分野の技術者は層が薄いと感じる。国が補修・補強分野の重要性を認識しているなら、それ相応の政策を示していく必要があるのではないか。
例えば、米国の土木学会は、「ガソリン税を引き上げて、橋を維持管理する資金を緊急に確保すべき」との提言を発表した。日本では逆にガソリン税の減税や道路特定財源の一般財源化が議論されているところである。ちなみに、ミネアポリスの橋梁復旧には約300億円を投じて架け替えることが決まったが、米国には危険とされる橋が15万橋以上あり、22兆円必要との試算が出ている。これを対岸の火と傍観していてよいのだろうか。
イマジン * 建設分野 * 23:29 * comments(0) * trackbacks(0) * - -

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